筋萎縮性側索硬化症(ALS)という病気について
筋萎縮性側索硬化症・ALSとは
筋萎縮性側索硬化症(以下ALS)は全身の筋肉が働かなくなってしまい、最終的には自発的に呼吸も困難となってしまう病気です。しかし筋肉自体に原因があるわけではなく、筋肉を動かすために脳からの指令を筋肉に伝える為の運動神経が死滅してしまう為、筋肉が働かなくなってしまいます。
ALSのタイプ
初発症状から大きく3つに分けられることがあります。
①下肢(下半身)型
手足の筋力低下・筋委縮から症状がでるタイプで、歩くときに踏んだりが効きにくくなる、階段が上がりにくくなる、靴やスリッパが履きにくくなるなどの症状があります。
②上肢(上半身)型
下肢型と同じく手足の筋力低下・筋委縮が起こりますが、特に腕や指の動かしずらさが主な症状になります。例えば、箸が使いにくくなったり、物が重たく感じたり、字が書けなくなったり、ペットボトルのキャップが開けられないなどが挙げられます。下半身は突っ張ったような力の入れ方になりやすいのも特徴の一つです。
③球麻痺型
初めにしゃべりにくくなったり、飲み込みにくくなる症状が出るタイプです。舌の動きやのどの動きが悪くなり、話しにくく・飲み込みにくい症状がでます。
上記の3つ以外にもいきなり呼吸ができなくなる症状から始まるタイプもありますが、上の3つより数が少ないと言われています。
病状の進行と環境の変化
移動面
病気の進行に従って、足の踏ん張りがききにくくなり移動が困難になってくると、杖や車椅子を使う方が多いです。車椅子を室内で使う場合には、段差の解消が必要なケースが出てきます。
その他の福祉用具についてもいくつかこちらの記事で書いています↓↓
コミュニケーション面
病気の進行とともに、コミュニケーションを取る方法についても変化が生じてきます。初めは口頭でのやり取りが可能な例でも、徐々に文字盤やパソコンや最近では携帯のアプリを使った意思伝達装置を利用する方が多いです。また、ALSは眼球運動は保たれやすいという特徴があります。
・瞬き一回でYES、瞬き二回でNO
・文字盤を利用して、あ行~わ行まで読み上げてふさわしい所で瞬きを行う
などと工夫をしてコミュニケーションを取られる方もいます。
発話や発語に関しては、言語聴覚士が専門的な視点で評価をしてくれます。コミュニケーションを助けてくれる機械を使用する場合は、比較的コミュニケーションが取りやすい時期にある程度の約束事(瞬きの回数や指差しなど)を本人としておくことが重要です。
嚥下や食事面
これも同じく言語聴覚士が専門的な視点で評価・訓練や環境設定などを行います。物を飲み込むときにも筋肉が必要なので、いずれは、飲水や食事も困難となってきます。胃ろうや経管栄養などの選択肢も体重減少が起こる前から必要です。
呼吸面
呼吸を行う為の筋肉も使えなくなる為、呼吸も困難になります。人工呼吸器を使用して呼吸を管理することが出来ますが、唾液や痰の処理が必要になり肺炎を予防する為に適宜吸引が必要になります。
リハビリで行う事
リハビリで行う事は、関節が固くならないように動かしたり、筋肉をできるだけ減らさないように運動をしていきます。また、動きのコツやポイントを一緒になって実践していくことが重要です。しかし、やりすぎるとかえって筋力低下を起こすこともある為、翌日に疲れが残らない程度の負荷で行う事が望ましいです。
運動だけでなく言語聴覚士では、コミュニケーションや食事・嚥下の評価を行いますし、理学療法士や作業療法士はできるだけ肺炎にならないような環境設定を考案するケースもあります。