セラピスト目線の杖・歩行器・車椅子の選び方(歩行補助具選定)
今回は歩行補助具について書いていきます。
移動する補助をしてくれる歩行補助具ですが、一体どのような基準で選ばれているのでしょうか。実はこれといった選択の基準や数値はありません。
セラピスト(理学療法士・作業療法士)が車椅子・歩行器・杖の順番にどのような考えで選んでいるかを個人的な視点で解説します。
歩行補助具選定のポイント
福祉サービスアビリティより引用:https://my.abilities.jp/lifecase/fukusiyougu-guide/hokouki-stick/
杖の種類と特徴についての記事はこちら↓↓
歩行補助具を選ぶときの原則
①意思確認
そもそもその方が歩行補助具を使うことに納得されているのか。必要性を感じているのかを確認する必要があります。必要に感じていない物は使われませんし、使っている想定で生活を想像しても全く整合性が取れません。まず初めに本人や家族の方に現状と歩行補助具を使ったメリット・デメリットを説明することが必須です。
②安全性
一般的に歩行補助具選定で最も重視されるのが安全性です。安全第一をモットーに選定されます。安全とは、転倒予防だけでなく術後の免荷、正しく使えるかなども含めています。
③活動性・安楽さ
次に活動量の確保を考えます。実際に使ってみて姿勢や動作を確認しこの人の活動性が維持・向上するのかを検討する必要があります。また、車椅子などであれば使ってみた時の安楽さや安定感、不安感なども評価しています。
以上の3つは多くの人が見ているポイントです。基本的にこの3つはぶれるとこが少ないと思います。
選定のポイント
①足の筋力
足の筋力が弱っている人は、バランスが悪く転倒のリスクが高くなります。その中でも、左右差が大きいのか小さいのかで使う歩行補助具が変化します。例えば身体を支えるだけの筋力が全くない人に杖や歩行器を選定することは非常に少ない例です。
一概には言えませんが足の筋力が必要な順番は、
一本杖➡歩行車・歩行器=四点杖➡ロフストランド杖➡
ピックアップ歩行器➡松葉杖➡車椅子
の順番でイメージし選定を行います。
②手の筋力
歩行補助具は手の力も非常に重要です。握力はもちろんのこと、肘を伸ばす筋肉や肩甲骨周りの筋肉も非常に重要です。支えとなる補助具を持つ手の力がないと本来の役割を果たせません。車椅子を操作するのにも手の力が必要です。少し歩くことは可能であるが車椅子は全く操作できないという人もいます。
一概には言えませんが手の筋力が必要な順番は、
松葉杖➡自操型車椅子➡ピックアップ歩行器➡ロフストランド
歩行器・歩行車=四点杖・一本杖➡前腕支持型歩行器➡介助用車椅子と考えています。
③バランス
安全性を考える上でバランスは避けて通れません。バランスをどのように見るかですが、最も分かりやすいのがその歩行補助具を使うことで実際に転倒の回数が減ることです。こうなれば間違いなくその人の現状のバランス問題は解決されているといっても過言ではないです。セラピスト目線では、重心位置やその人の筋力のバランス・左右差や前後のどちらにふらつきが多いのかなどを見ています。
これも前後左右の方向によって変わりますが、
バランスが悪い人が使用していることが多いのは、
車椅子・ピックアップ歩行器➡歩行器・歩行車
➡四点杖・ロフストランド杖➡一本杖➡松葉杖
の順番が多い印象です。
④使用する環境
使用する環境も非常に大事です。段差が非常に多い家屋家屋環境の方に車輪がついた車椅子・歩行器・歩行車を提案すると段差解消の提案もセットで必要になります。ガタガタする外の道を歩くのであれば運転しやすい車輪が大きい歩行車を選定する方が良いです。
⑤活動範囲
その人の耐久性や活動範囲を見ることも重要です。買い物に行くときに杖でも歩けるが疲労度が高い人は歩行車やシルバーカーを使った方が楽に行けるだろうし、杖で歩けるけど普段ベッド周囲でしか生活せず伝い歩きで済むのであれば杖を提案する必要は低くなります。
個人的な歩行補助具の選定方法
※車椅子の人を除いた個人的な歩行補助具の評価方法は、
・動作や操作の安全性を認めているか
・恐怖心の増減が存在するか
・動作に対する意欲の向上が見られるか
・歩行補助具の受け入れ
これらに加えて↓↓
①歩行補助具を使うことで過剰に働いている筋肉が柔らかくなればその周囲の関節の自由度が増してバランス能力が向上するのではないか。
②逆に歩行補助具を使うことで動作時に必要な筋肉の活動が増す事で関節が安定してバランスがとりやすくなるのではないか。
といった視点で評価しています。
確認する筋肉は背中・お腹・お尻・膝の筋肉が多いです。 補助具を使うことで重心位置が変化し、筋肉の使い方や使うタイミングが変化することがある為、その点を評価し提案しています。